薄毛は多くの人にとって深刻な悩みであり、その原因は様々です。遺伝、ストレス、ホルモンバランスの乱れなどが挙げられますが、実は日々の食生活で摂取する「鉄分」の不足も、薄毛の大きな原因の一つとなり得ます。鉄分は、私たちの体内で酸素を運搬するヘモグロビンの主要な成分であり、全身の細胞に酸素を供給する重要な役割を担っています。この酸素供給の役割は、髪の毛の健康な成長に不可欠です。髪の毛は、毛乳頭から栄養を受け取り、毛母細胞が活発に分裂を繰り返すことで成長します。この毛母細胞の活動には、十分な酸素とエネルギーが不可欠であり、鉄分が不足して酸素供給が滞ると、毛母細胞の働きが鈍化し、髪の成長が阻害される可能性があります。その結果、髪は細く弱くなり、ハリやコシが失われ、抜け毛が増加し、薄毛が進行してしまうことがあります。私の身近な例を挙げると、知人の女性で出産後に薄毛に悩んでいた方がいました。産後はホルモンバランスの変化だけでなく、育児による疲労や栄養不足も重なりやすい時期です。彼女も例外ではなく、抜け毛が増え、髪のボリュームが減ってしまったと嘆いていました。健康診断で軽度の貧血を指摘され、医師から鉄分補給を勧められた彼女は、食事に加えてサプリメントも併用し始めました。数ヶ月後、再会した彼女の髪は、以前よりも明らかにハリとツヤを取り戻しており、薄毛の悩みも軽減されたようでした。もちろん、産後の薄毛は一時的なものが多いですが、鉄分補給が回復を助けた一因である可能性は十分に考えられます。鉄分を効率的に摂取するためには、食品の種類と組み合わせを意識することが重要です。鉄分には、動物性食品に含まれる「ヘム鉄」と、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」の二種類があります。ヘム鉄はレバー、赤身肉、カツオなどに豊富で吸収率が高いのが特徴です。一方、非ヘム鉄はほうれん草、小松菜、ひじき、大豆製品などに多く含まれますが、吸収率がヘム鉄に比べて低いため、ビタミンCと一緒に摂取することで吸収率を高めることができます。